厄介なふたり
- 15hono20
- 1月15日
- 読了時間: 4分
ほのかは試着室の中からカーテンを開けて、二着のニットを両手に見比べながら、ラキオに問いかけた。
「ねぇ〜ラキオちゃ〜ん、どっちがいいと思う〜?」
「君の服なんだから君が決めなよ……どうせもうほとんど決まってるンだろう?」
「あは……バレた?」
心中を見透かされ、ほのかはちゃっかりとはにかむ。
「ちなみにラキオちゃんは、私がどっちを選ぶと予想しますか?」
「鬱陶しいな……さっさと会計したら?」
「いいじゃんか〜。教えてよっ」
唐突に始まったクイズ。必要以上に拒絶するのも面倒で、ラキオは差し出された二つのうち、片方のニットを指差して答える。
「……こっち」
「あたり〜!さっすが!」
ラキオの正答が偶然ではないことを察しているほのかは、ニットを抱えてぴょこぴょこと喜びを露わにする。
「こっちの方がシルエット綺麗だったもんね。色味はどっちも可愛いけど、こっちの方が肌触りも好きだし、高級感ある」
つらつらと解説するほのかを、ラキオはそんなの当然だとでも言いたげに、退屈そうに眺める。
「やっぱ私たちって、相性抜群ですなあ〜。運命的な出会いっていうか?唯一無二っていうか?ふふ」
ほのかの口から転げ出た台詞にラキオは表情を曇らせ、露骨な拒否反応を示す。
「は?僕は合理的に判断しただけなンだけど。意見が合致して当然のことを、相性や運命なんていう非論理的な概念にこじつけるのはよしなよ。知能レベルを悟られたくなければね」
するとほのかは目を丸くして、答える。
「えっ……つまりラキオちゃんって私のこと、もっとレベル高いと思ってくれてた……!?」
「っ、誰もそんな話はしてない……!」
天然なのかなんなのか分からないほのかの切り返しに、ラキオはますます苛立ちを募らせる。
「えへへ……それに、相性抜群っていうのも、別に非論理的な話じゃないですよ?」
「はぁ……?」
当のほのかはそんなラキオにはお構いなしといった様子で、にこやかに話題を続ける。
「だってラキオちゃんも合理的に考えた結果、こっちの方がいいって思ったんでしょ?私も、シルエットや素材感がいいって思ったからこっちを選んだ。ものを選ぶ時に判断基準が同じなのって、相性が良いってことにはなりませんか?」
「だから。二度言わせないでくれないか。そう考えるのは当然のことなンだよ」
「そこなんですよ!ラキオちゃん、自分で言ったじゃん?『意見が合致して当然』だって。さらっとそんなことを言えるような相手、普通なかなか現れないんですよ?それともラキオちゃんは、今まであらゆる人と『意見が合致して当然』だった?ふふふ〜」
「……っ、だが君と意見が食い違うことだってあるだろう」
「もちろん。でもその時は、お互いにどうしてそう思うのか聞いて、意見を言い合って、必要なら歩み寄れるでしょ?ラキオちゃん、とってもとっても優しいもんね〜。えへへ」
「僕は合理的判断に従って行動しているだけだよ」
「それが良いんだよ!私って、ストレートに優しくされると重く感じちゃうし、申し訳ないなって思っちゃうタイプ。だからね、ラキオちゃんの『合理的に行動した結果、優しくなった』っていうやつ、すごく心地良くて、大好きなの!ラキオちゃんは合理的じゃない時は、ちゃんと厳しくしてくれるもんっ。ほらね、相性抜群でしょ?」
満面の笑みを投げかけられたラキオは反論の手立てを探っていたが、数秒の沈黙の後に、声を低くして返した。
「……君は……つくづく厄介な人間だな」
「やったー!ラキオちゃんに勝ったー!」
「もうこの応酬に価値を見出せないだけ。勘違いしないでくれる?」
ため息を吐くラキオをよそに、ほのかは身支度を整え、買い物カゴを手に持つ。
「とか言って〜。そんな厄介な私をなぜか切り捨てずに、こうして一緒に居てくれてるじゃないですか〜、ふふ。こうやって私に言い負かされるのも、悪くないって思ってるからなんじゃないの?」
「それは完全に曲解だ。この上なく不愉快だよ、今後一切しないで。そもそも僕は負けてない」
「え〜〜?私は好きだよ、ラキオちゃんに言い負かされるの〜〜」
仏頂面をしたラキオの腕にほのかは空いた片腕を絡ませ、冗談めかしてきゅっと寄り添う。
「しつこいな……!くっつかないでッ」
本気のトーンで拒絶し、ほのかを振り払うラキオ。
流石にやりすぎたかと反省しつつ、しかし茶目っ気たっぷりに、ほのかはラキオに謝罪するのだった。
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